夏が近づくと食中毒を警戒する子育てママも多いはず。
小さい子どもほど重症化しやすい食中毒。
何とかしてシャットアウトしたい・・・
でも、どうやって?家族みんなで健やかな夏を過ごすために、
まずは食中毒とは一体何かを正しく知ることからはじめましょう。
有毒物質が含まれた飲食物を摂取して起こる中毒を「食中毒」と呼びます。その主な原因は細菌とウイルス。ここでは主だった食中毒菌の種類と特徴についてご紹介します。
食中毒の原因となる菌の内訳をみると、カンピロバクターが発生件数・患者数ともに突出しています。一方、ウェルシュ菌の発生件数はさほどでもありません。しかしそれにも関わらず患者数が多いのは、一度に大人数の調理を行った場合に発生しやすいためです。
◎引用文献:厚生労働省「平成25年病因物質別月別食中毒発生状況」
さまざまな種類の菌が引き起こす食中毒ですが、共通しているのは梅雨から夏にかけて多く発生するということ。
食中毒菌の多くは気温10度以上で活発になり、人の体温くらいの温度下で増殖スピードが最大になります。
さらに菌の多くが高温多湿な環境を好むため、日本の夏は絶好のシーズン。
たとえばカンピロバクターは真夏に多少減りますが5~6月と9月に発生件数のピークを迎え、サルモネラは7~8月がピーク、O157のピークも真夏です。
近年都市部で多く発生している「アニサキス」という寄生虫による食中毒も、夏場に多く発生しています。近年は温暖化の影響で5~9月まで夏の陽気が続くことを考慮すると、食中毒のシーズンは年々長くなっているといえそうです。
◎引用文献:厚生労働省「平成25年病因物質別月別食中毒発生状況」
子どもは腸内フローラ(※)の発達が未熟で菌が容易に増えやすいため、食中毒菌への感染で重症化することがあります。
O157やサルモネラには死亡例もあり、そのリスクが高いのはやはり子どもや高齢者。
体力がないため、嘔吐や下痢が続くと短時間で脱水症状に陥ることも。また腸内だけではなく血管の中に菌が入ることも起こりやすく、大人よりも重い症状で病院に運ばれてくるケースが多くみられます。
※腸内フローラとは
人の腸内では多様な種類の菌が関わり合いながら、複雑な生態系をつくっています。この微生物の集まりを植物の群集(フローラ)に似ていることから「腸内フローラ」と呼んでいます。
「食中毒は飲食店や学校給食で発生するもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、全国の家庭内で食中毒は発生しています。細菌類は私たちの暮らしのいたるところに存在しているため、特に食事の準備を担当するお母さんは要注意です。
よく「カレーは2日目がおいしい」といいます。しかし時間が経ちカレーのうま味が増すと同時に、菌も増えている可能性があります。ウェルシュ菌は酸素が苦手なため、カレーやあんかけのようにドロッとした環境下でどんどん増殖。この菌は非常にタフで、100度で4時間加熱しても死滅しません。消毒薬も効かないのです。安全性を考えると、調理後すぐに食べた方が良いでしょう。カレー同様、食べ物の見た目やニオイに異常がなくても食中毒にかかることがあります。腐っていなくても菌が増殖していることがあるためで、「食中毒」と「腐敗」はまったく別のものだということを覚えておいてください。
2011年8月、自宅で生卵を食べた女性がサルモネラによる食中毒で死亡するという事件が発生しました。 サルモネラによる食中毒は100万個以上の菌がないと発症しないため、冷蔵庫できちんと保存していれば通常は生で食べても問題はありません。この食中毒事件の卵の保存状況は明らかになっていませんが、食べ残された料理や冷蔵庫内に保管された卵の殻の表面、卵パックの内側などからサルモネラが検出されました。自分でどんなに注意していてもリスクはどこに潜んでいるか分かりません。いつでも菌に対抗できるように、免疫力を高めておくことが重要なのです。
たとえ重症化していなくても、熱や腹痛、下痢、嘔吐などの症状は辛いものです。
そんなとき、市販の下痢止めを服用する方もいらっしゃると思います。
しかし腸の動きを止めてしまうタイプの下痢止めは、食中毒菌を長く腸内にとどめる結果になってしまい、逆に症状を悪化させることもあるのです。
一方、整腸剤と呼ばれる薬は主に生きた善玉菌を含んでおり、バランスの乱れた腸内フローラを整える作用を持ちます。食中毒の発生時に整腸剤を処方するお医者さんが多いのは、そういう理由からなのです。
食中毒の統計に出ている患者数は集団発生の場合に限られ、家庭で子どもが感染したような小規模なものはほとんど数字に含まれていません。
仮に下痢症状を起こした患者すべての原因を究明すれば、食中毒の患者数は桁違いに増えるといわれています。国の統計によると、2011年の食中毒の患者数は2万1616人。
しかし厚生労働省内に設置されている「食品衛生分科会」のデータによると、2011年の全国でのカンピロバクター推定感染者はおよそ347万人、サルモネラの推定患者数はおよそ71万8000人に上るとされています。
小規模感染は家庭料理によるものが多いと考えられているため、各家庭での予防対策がカギを握っているのです。